大切なひとが、永遠の世界へと旅立ったことを知った。
何となく予感があった。
不思議なほど、静かな気持ちで受け止めている。
桜の満開の季節に、旅立つことはとても似合っているのかもしれない。
西行が好きな、たくさんたくさん旅をした人だった。
願わくば花の下にて春死なん
その如月のもちづきのころ
どれだけたくさんのものを、与えてくれたのかわからない。
穴の開いた袋のように、受けても受けても
流れていってしまったものが沢山あったのに、
おおらかに笑いながら、屈託なく与えてくれた。
大きくてあたたかい包み込んでくれるようなひとだった。
人と人はどこで出会っているのだろう。
物質のレベルだけではなく、目には見えない「心」の場所があって、
確かにそこの場所で出会えたひと。
そう思った人は、私にとってはこの人生では、ほんのわずかだ。
ある時間、深くかかわり、語り合えたことの奇跡に、感謝している。
そこで目に映った風景の鮮やかさ、美しさ、光の明度。
花の香りのかぐわしさや優しさ、
言葉が魂に触れることができること。
心からの信頼。
神への信仰に命をかける人は、その信仰を失うことがあるかもしれない。
だが、神そのものに命をかける人は、決してその命を失うことは無いであろう。
全然触れることのできないものに命をかけること。それは不可能である。
それは死である。が、それが必要なのだ。
あたらしい旅は、きっと光輝く空間への旅なのだろう。
Buon Viaggio!
そしてまた、いつか会えるときまで。
その時まで、私もひとつの魂として、成熟していけるように。