興福寺少年阿修羅にかなしみを与えし仏師の背や広からむ
風狂ふ桜の森にさくら無く花の眠りのしずかなる秋
死者たちに窓は要らぬを夜の風と交はる卓の薔薇へ知らせよ
うつくしき弥勒となりしあかまつのいたみをおもふ幸ひとして
水原紫苑さんの「星の肉体」より。
散文集と短歌からなる構成…。
能・歌舞伎・夢・歌人たちへの思いが、水原紫苑の感性を通して綴られている。
とても興味深い。
短歌、時々読みたくなるのだけれど、少しこれからは集中して
読んでみたいと思った。とくに古の歌人たち。
時間の流れかた、心のありかたが、このせわしい現代とは決定的に
ちがうような感じをうける。
そうした時間の感覚を、自分の中に見つけてみたい。