lucciora’s diary 蛍日記

共感する魂を求めて

映画のなかの色彩~青いパパイヤの香り

青いパパイヤの香り [DVD]

 

五月に花は咲くけれど 

それは去年の花ではない 

人はいくたび恋しても    

最初のキッスはいちどきり

(青い小径 竹久夢二

 

映画の中の色のイメージから思いつく、さまざまな愛について

つらつら思いつくままに書いています。

 

実はこの映画を観たのは、イタリアのミラノでした。

イタリアについたばかりで友達もいない冬のある日、

町のシネマクラブ?コミュニティサロン?のような場所で、

この映画がかかっていて、ひとりで観に行きました。

 

当然のことながら、まだ言葉も全然わからず、

くわしい意味はとれませんでした。

それでも、この映画はずっと印象に残りました。

 

青いパパイヤの香り、青といっても原題はverteなので、緑ですね。

日本では、みずみずしい緑色を青と呼びますね。

 

パパイヤのみずみずしい香りが感じられるような生き生きとした情景、

微細な光の美しさ、少女の邪気のない笑顔。

 

舞台は1951年ベトナムサイゴン

田舎から奉公にやってきた10歳の少女ムイの成長を描く作品。

…大人になったムイの恋もよかったのですが、やはり個人的には

少女時代のムイの無垢な美しさ、輝きが、印象に残りました。

 

青いパパイヤの香り

その芳香は、これから何度も出会うかもしれないけれど。

けれど…少女の額を流れる汗が光っている、

これはその瞬間だけのものなんだなと、

なにか強烈に感じたのを覚えています。

 

当時、自分も若かったですが、

時がどんどん流れていくことを、

今よりも強く意識していたのかもしれませんね。

 

夢二の詩のように、

”人はいくたび恋しても 最初のキッスは一度きり”

 

一回性というのか。

竹久夢二も、心のなかの永遠の少女像を、

追い求めた画家ではないかと思いますが、

 

”5月に花は咲くけれど、それは去年の花ではない…”

春は何度も来るけれど、同じ春は来ない。

 

青さ、若さ、そうしたものの輝きを見るとき、

なにかそうしたセンチメントが起こるのは、

とらえがたさ、そんなものへの憧れなのでしょうか。

 

無常感と初恋のはかなさ。

それが青いパパイヤの香り、なのでしょうね。